スピルバーグ最新作に見る撮影監督の役割

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written by Parade Shimizu

スピルバーグ往年のコラボレーター、ヤヌス・カミンスキーは「光」で語る

スティーヴン・スピルバーグ監督とヤヌス・カミンスキー撮影監督のコラボレーションは、「シンドラーのリスト」、「A.I.」、「リンカーン」等、多くの名作を生み出しました。カミンスキーはスピルバーグ作品で2度アカデミー撮影賞を獲得しています。

2人は現在公開中の「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書」で17度目のタッグを組み注目を集めています。「ペンタゴン・ペーパーズ」は「大統領の陰謀」(1976年)等の報道を扱った名作のオマージュの側面があり、同時に、”フェイクニュース”と声高に叫ばれる現代へ向けたメッセージも込められています。

スピルバーク最新作で工夫した点について、カミンスキーがインタビューで語っています。

カメラムーブメント

「ペンタゴン・ペーパーズ」の大部分は報道スタジオで展開します。ジャーナリストが意見や情報をお互いに交換しながら報道部屋を動き回るので、同じようにカメラも素早く動き、シーンのエネルギーを映し出します。

照明

ジャーナリストは長時間働き続ける上にタバコやコーヒーを大量に消費するため、表情が暗く、重苦しく見える照明デザインを行いました。

長回し

報道スタジオから一歩外に出るとスタイルが大きく変わり、リラックスした雰囲気になります。特にメリル・ストリープのキャラクターが最初に登場するシーンは、とても長いテイクで構成されています。優れた演技とストーリーが揃っていたため、編集による演出を加える必要がなかったのです。

全クルーのリーダーとしての撮影監督

カミンスキーは撮影監督として、カメラの前にある物全てに自分の意見が反映される事が重要だと話します。例えば画面に映る電灯は美術部が用意しますが、その形状や色などについて必ずカミンスキーが承認するそうです。

また、プリプロの段階から制作に深く関わり、特にロケーションの決定にはこだわります。時間や経費が問題になろうとも、適さないロケーションは全て却下するそうです。カメラに映る全ての物を使って物語を作り上げることこそ、シネマトグラファーの使命だそうです。

あえて古いレンズを多用

最新のレンズはシャープでクリアな映像を映しますが、それは本作でカミンスキーが求めたクオリティではありませんでした。作品の性質に合わせて柔らかい映像を作り出すために、あえて古いレンズを使用したそうです。

しかしビジュアルエフェクトが追加されるシーンではポスプロをスムーズに進めるためにシャープなレンズを使用したそうです。

プリプロからポスプロまで、カメラのことだけではなく映画制作の全般を指揮するカミンスキーの能力こそ、スピルバーグが彼を信頼する所以なのでしょう。

References:
https://www.moviemaker.com/archives/news/the-posts-production-longtime-spielberg-dp-janusz-kaminski-expresses-himself-through-light/
http://www.imdb.com/title/tt6294822/
http://www.imdb.com/name/nm0001405/

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