インディー映画10の戒律 by ダーレン・アロノフスキー
今週開催中のサウス・バイ・サウスウエスト・フィルムフェスティバルが提供する貴重な機会の一つが、著名人による講演です。
今年登壇したダーレン・アロノフスキーからのインディー映画従事者へのアドバイスをかいつまんで紹介します。
あなたにしか作れない映画を作れ
アロノフスキーがキャラクターを作り上げる時は必ず、世の中で巻き起こっている事に対する自分自身の視点を元にするそうです。そうする事で他の誰にも真似出来ないキャラクターが生まれるのです。
成功へのプロセスの9/10は、粘り強く継続する事
『ファウンテン 永遠につづく愛』や『ブラック・スワン』は、撮影開始前に繰り返し予算を削られ、制作中止の瀬戸際に追い込まれました。しかしアロノフスキーは諦めずに低予算でも制作出来るように脚本を編集し、両作品を完成させました。
コラボレーターと家族の様に親密になれ
アロノフスキーはクルーやキャストと関係を築く際、指示を与える親の様な立場ではなく、信頼出来る友達の様な立場になる事を目指すそうです。親密な関係を持つ事こそ、作品に携わる全員を団結しお互いに切磋琢磨して、自らが誇りに思える物を作る道だとの事です。
準備は周到に、現場では柔軟に
アロノフスキーはプリプロダクションが映画制作で最も大事だと言います。『ファウンテン』の全ショットを緻密にコンテに起こした他、『マザー!』の主演役者とは数か月に及ぶリハーサルを経て撮影に臨みました。この準備の積み重ねが、現場で何かうまく行かない時に決断を下す自信になるのです。
現実に順応しろ
他のインディー映画制作者と同様に、アロノフスキーも当初は豊富なリソースを持っていた訳ではありませんので、制限を強みに変える工夫を繰り返して来ました。例えば『レスラー』はドキュメンタリー映画風に1台のカメラで撮影されましたが、この手法は物語のトーンに最適だっただけでは無く、機材にかかる予算を抑える事がに繋がりました。
役者を恐れるな
単独で作品を制作する文学や彫刻の経験を経て映画作りに辿り着いたアロノフスキーにとって、自分が望む演技を役者から引き出す事は簡単ではありませんでした。役者が失敗を恐れずに試行錯誤出来る空間と信頼関係を築く事が監督の役割だそうです。
観客の視線から判断を下せ
観客が見る完成形を常に意識して撮影に臨み、最終的に表現したい感情を現場で引き出す事が要との事です。
描いたビジョンに最後まで身を委ねろ
自分にしか語れないストーリーを具現化する事の利点は、プロジェクトを他人に奪われない事です。脚本からコンテ、撮影、編集、完成まで、緻密な工程を描いて、それがその作品を作る唯一の方法であれば、完成形を誰かに乱される危険は少なくなります。
自分の作品を切り捨てろ
「どんな映画でもは決して完璧にはならない。だからどこかで諦めなくてはならない。」アロノフスキーは『ファウンテン』をどうしても完璧に出来ず、長期に渡って細部の編集を続けました。しかし、その時間とエネルギーを新しい作品に費やした方が良いと自身は言っています。
熱くなれ
「混沌が巻き起こる現代、空虚な映画を作る事は許されない。暴力じゃなく愛にフォーカスしろ。単に映画スターの手に銃を持たせるだけで満足するな。否定的な奴らは放っておいて世界を改善しろ」
ダーレン・アロノフスキーは手作りの映画でキャリアをスタートさせ、現在ではより大きいスケールで自分の作品を世に送り続ける成功者の一人です。苦労と努力を積み重ねて来た彼の言葉は多くの人が共鳴するのでは無いでしょうか。
References:
https://filmschoolrejects.com/darren-aronofsky-sxsw/
http://www.imdb.com/name/nm0004716/